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~コホート研究 vol.01~ 「タバコを吸うと肺がんになる」ホント?その証拠は?


「喫煙すると肺がんになる」



真偽はともかく、一度はこのフレーズを聞いたことがあるのではないでしょうか?

しかし、これが本当かどうかを調べるにはどうしたらいいか?

まず、考えられるのはタバコを吸っている人を探し出してきて、その人たちがいずれ「肺がんになる」のかをずっと観察していくという方法です。煙草は当然20歳からしか吸えませんので、例えば25歳で喫煙している男女を100人選びます。

当然、タバコを吸っている人たちだけを追いかけて観察しても、比較するものがありませんので、同時に25歳でタバコを吸っていない男女も100人選びます。

そして、この2つのグループを30~50年間追跡して比較し、「タバコを吸っている人の方が、擦っていない人よりも肺がんになった人が多かった」というになれば「喫煙すると肺がんになる確率が高くなる」ということが言えそうだということになります。





コホートとは「集団」という意味!


これをコホート研究といいます。コホートとはもともとは古代ローマの歩兵隊の単位で、約300~600人からなる兵隊の群という意味です。コホート研究には「コホート(集団)を追跡する」という意味も含まれています。

ところが、このコホート研究は1人や2人を追いかけても証拠としてはあまりにも弱いので、先ほどは100人と言いましたが、少なくとも数百人から数千人という人数が必要となります。そして、先ほどの30~50年といったように、結果がわかるまで何十年とかかります。そのため莫大な労力と費用、時間を要するためおいそれと行うことは難しく、どうしても大きなお金を動かせる、国などが主体のプロジェクトに限られてしまいます。


コホート研究よりも簡便な「症例対照研究」!


そこで逆に、すでに肺がんになってしまった人を集めて、この人たちが過去にタバコを吸っていたかどうかを確認するという方法があります。

煙草を吸っていたか?吸っていたとすればどのくらいの期間か?今はやめているのか?などの聞き取り調査をします。もちろんこのケースでも比較対象が必要ですので、同じ数の健康な人たちも集めて同じように調査し、この2つグループの結果を比較します。

「肺がんになってしまった人は、過去にタバコを吸っていた人が多い」となれば「喫煙すると肺がんになる可能性が高い」と言うことができます。これを「症例対照研究」といいます。

ただし、過去を正確に記憶している人は少なく、虚偽の報告をしても分かりません。よって、前出のコホート研究よりはエビデンスレベルが低くなります。

簡単に言うと、原因から追究していくのがコホート研究で、結果から逆に追跡して原因にたどり着くのが症例対照研です。


前向きコホートと後ろ向きコホート


ちなみに、前出のコホート研究は正確に言うと「前向きコホート研究」といい多くのコホート研究はこの前向きコホートです。しかし、前向きがあるということは必然的に「後ろ向きコホート」あります。

この喫煙と肺がんのケースでは、過去にタバコを吸っていた人たちを対象にして現在、肺がんを発症しているか発症していないかをグループに分けて、今後さらに重症化の程度や今発症していない人が今後発症するかどうかなどを追いかけていく調査です。症例対照研究との違いは、これから先も追いかけていくかどうかです。

コホート研究や症例対照研究は、個人ではなくあくまでも集団を対象として行う研究で、これらを「疫学調査(Epidemiology)」といいます。元々は伝染病の研究として始まりましたが、その後はがんや生活習慣病、栄養と疾患の関係等だけでなく、交通事故や自然災害などへも応用されています。

公衆衛生と予防医学への基礎データを提供する領域として評価される一方で、エビデンスレベルとしては決して高くは評価されていないのは残念なことです。


世界トップレベルのコホート研究が日本に!


さて、コホート研究として世界的に最も知られているのが、1948年から米国北部のマサチューセッツ州フラミンガム町で住民約28000人を対象に行われている「フラミンガム(Framingham)研究です。

狭心症や心筋梗塞の発症原因として肥満や喫煙、脂質代謝異常などが特定されたことで一躍世界中の脚光を浴びました。今では普通に使われる「リスクファクター」(危険因子)という言葉を最初に使ったことでも有名です。

しかし、このフラミンガム研究よりも世界的に評価の高いコホート研究が、なんとこの日本にあります。それがHISAYAMA Study「久山町研究」。福岡県福岡市に隣接した糟屋郡久山町の約8,400人の住民を対象に1961年から60年間継続されている貴重なコホート研究です。2002年からは、世界に先駆けて遺伝子解析を加えた生活習慣病のコホート研究もスタートさせ注目を集めています。


次回はこの久山町研究についてお話ししていこうと思います。