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eスポーツは健康の味方か?敵か? コンピュータゲームが高齢者の健康を守る?





「eスポーツ(esports)」という言葉を耳にする機会も多くなってきたのではないだろうか?「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲームなどを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。1970年代にテレビゲームとして誕生し、その後コンピューターゲームとして進化を続け、2000年代に入ってからはインターネットの普及によって対戦型のオンラインゲームとして一気にその人気が爆発した。コロナ禍における「巣ごもり需要」の1つとして、特需に沸いたコンテンツの1つでもある。




 日本では子供を中心とした遊びとして捉えられており、オンラインゲームにスポーツという言葉を付与することに違和感がある人も多いと思われる。しかし、スポーツを体育の延長として捉える日本と比較して、海外ではスポーツの概念が娯楽やレジャーに近く、早くからそのエンターテイメント性に注目が集まり一大産業として市場の拡大が続いている。ちなみに、欧米ではチェスや将棋、囲碁、トランプなどもスポーツの範疇に含まれる。

アジア各国でもeスポーツの人気は高く、2018年にインドネシア・ジャカルタで開催された第18回アジア競技大会では公開競技として採用され、2022年に中国・杭州で開催される第19回アジア競技大会ではついに正式なメダル競技として実施されることが決まっている。2019年フィリピンで行われた東南アジア競技大会では正式競技として実施されて大人気を博した。ちなみに、日本でも2019年に行われた「いきいき茨城ゆめ国体」において、国体史上初となるeスポーツ大会「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」が開催されている。

実は、国際オリンピック委員会(IOC)が「オリンピックアジェンダ2020+5とIOCのデジタル戦略」において、デジタルを通じた交流の拡大やバーチャルスポーツ発展の奨励、ビデオゲームコミュニティーとの相互作用の継続などを提言しており、東京オリンピック・パラリンピック開催前の公式イベントの一つとして、野球、自転車、ボート、セーリング、モータースポーツの5つの「eスポーツ」の競技大会が5月から6月にかけて開催されたばかりだ。



 「eスポーツ」をスポーツと捉えるかのどうかの議論は尽きないが、思わぬところでその可能性が注目されている。eスポーツが認知症の発症リスクを下げ、高齢者の健康寿命を延ばす効果があるのではないかという研究が、日本各地で既に始まっている。「健康づくり」を目的として、実際の運動とeスポーツ合体させた「ソーシャルeスポーツ」という新しい分野も生まれている。

熊本県美里町では、2020年10月からeスポーツを試験的に「街づくり」にとりいれている。70歳以上の高齢者約20人が週1回、事業連携しているゲームメーカーの人気ゲーム「ぷよぷよ」をプレーし、2021年3月にはオンラインで地元小学生との対抗戦も行われ大いに盛り上がった。

ここではeスポーツが本当に高齢者の健康に寄与しているかの検証が行われている。毎月1回、参加者全員に2つのテストを実施してデータを蓄積し、専門機関に医学的な検証を委託している。簡単な質問に答えることで認知症の可能性を判断する参考になる長谷川式スケールと視覚的な探索能力や注意力の持続性を測るトレイル・メイキング・テスト(TMT)だ。

ちなみに長谷川式スケールでは全員が正常値の範囲に収まっている。また、TMTにおいては昨年10月のスタート時には全員が年代別の平均値を大きく下回ってものが今ではほとんどが平均値を上回っており、脳の情報処理能力についても改善傾向が見られている。さらに、身体能力においては開眼片足立ちと握力について向上の傾向が見られているとのことだ。

国立長寿医療研究センターの研究では、高齢者は「社会とのつながり」が多様であるほど、認知症の発症リスクが低下し最大で46%低下するという発表もある*。コントローラーを操作する身体的効果、考えることによる認知症予防効果、そして孤独になりやすい高齢者たちが多方面での日常的なつながりを持つ社会的な効果など、eスポーツが高齢者の健康に有効である可能性は高い。


しかし、いい面ばかりではない。2019年に30年ぶりに改訂されたWHOの国際疾病分類「ICD-11」でスマートフォンなどのゲームにのめり込んで日常生活に支障をきたす「ゲーム依存症」が国際的に「ゲーム障害」という疾患として認められた。

今は、若者を中心にゲーム依存症は大きな社会問題となっており、今後、予防対策や治療法の開発などが進むとみられるが、これが高齢者にも伝播しないとも限らない。

功罪併せて慎重に見守る必要がありそうだ。